ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」
第一部 ホテルレストランビジネス 1982年〜1990年
第一章 マーケット事情と開業物語
その1 大阪ミナミのマーケット事情
2001/6/24更新
日本最大の飲食店激戦地区大阪ミナミ(1994年作成) 大阪ミナミとは「かに道楽」のかにで有名な道頓堀界隈を中心に、南北1.8キロ東西1キロの間のごく小さな地区をいう。いったいそのごく小さな場所に何軒の飲食店があるか。 管轄の「大阪南保健所」に聞いてみた。「保健所に届けている飲食店だけで15,000軒あります。登録されていない店を含めると30,000軒はあるでしょう。 加えて風俗営業の店も10,000軒はあるでしょう」と。 この狭い地区になんと30,000軒の飲食店がひしめきあっている。食べたいものや飲みたいものがほぼ24時間自由に楽しめる街。 これは東京新宿歌舞伎町や札幌すすきの、博多の中洲など問題にならない数ではないか。言いかえれば大阪ミナミは日本最大の飲食店激戦地区といえる。 ではいったいどれくらいの人がミナミで飲食するのであろうか。夜だけで30万人と言われる。 夕食では1人100円のハンバーガーから1人5万円以上の高級料亭まで、あらゆる価格帯で熾烈な戦争が毎日繰り返されている。 しかもミナミの家賃は桁外れに高い。以前特別価格で貸すから商売しないかと誘われた。10坪の店で1日5万円、1ヶ月150万円の家賃で保証金が2千万円である。 この物件は心斎橋の1等地ではあったが、どんなに知恵を絞っても飲食店では採算のとれるものではなかった。 以上のように大阪ミナミで飲食店を営業していくことは並大抵の努力では出来ない。競争に負けた店が閉店する。また新たな挑戦者が開業するという繰り返し。 このような理由から大阪ミナミで長年飲食店を営業されている皆様のレベルは日本のトップクラスと断言する。(他で食べ歩いてもミナミの素晴らしさを再認識するだけ) このような大阪ミナミで1人の顧客もなかったド素人の私が8年に及ぶ戦争をしてきたのです。偉大なるお客様に叱られ、教えられ、助けられて戦い続けました。 ホテル内レストラン開業時には何も知らなかった私は大阪ミナミの飲食店で多くを学び実践していったのです。 結果、窓もなく景色もない洞窟のようなレストランで、調理場を含めても75坪という小さなレストランで年間6億円を売上げました。 |
この原稿は1994年のものです。少々時代錯誤の部分があることをご理解ください。
2006年再読