ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」  

第七部 外から見たホテルビジネス 2002年〜

2004年02月01日更新 

ホテル長期滞在を終えて その3

長期で滞在していたホテルには、フランス料理をだすテラスレストランがある。ここの朝食は1,900円だが見事な和食を出している。(洋食はいただいたことが無い)

味や盛付けなどをみると、しっかりした板前さんが作っているに違いない。コーヒーショップの朝食券に差額を払えば食べることが出来た。(たまにしか行けなかったが)

部屋のメニューには季節によってメニューが変わりますと書かれているが、季節が変わってもメニューは変わっていなかった。

要するに季節感の感じられない「美味しい和食であった」。おそらく調理場の都合で食材が変わることがあるので「季節によってメニューが変わる」と言っているのかもしれない。

このレストランのサービスはコーヒーショップのサービスと比べるとかなり行き届いている。朝からソムリエバッチを付けた人も見かける。

ある日のこと。私の隣に英語をしゃべる外国人が1人で来ていた。若いサービススタッフが英語がまったくしゃべれないのだ。この事実はかなり問題と思う。

私は朝食時に夕食のメニューを見せてもらった。その日の夜にディナーで利用してみようと思った。それは○○ホテルのレストランは美味しいことで有名と聞いたからだ。

部屋にある置いてある今月のお勧めコース「5,000円で13品」が出されるムニュデギュスタシオンを予約した。

実はこのレストランのグランドメニューは接待客中心のメニューになっていたからだ。コース料理は一昔前の価格で8,000円からのコースで構成される。

一品料理も3,000円中心の価格で出されている。メニューを見た限り客単価は1万円を超えるメニュー内容であった。

このような高級レストランが13品で5,000円のメニューを出す目的を知りたかったからだ。

その日の夜は我々2名と4名の女性客と男性2名客だけの8名営業。(客席は50席を超える)その全てのゲストが5,000円のメニューを注文していた。

はっきり言ってこのメニューはレストランの評判を落とす危険メニューである。一皿一皿は和食の先付け程度の量しかない。

これで美味いや不味いを論ずる以前の問題。何を食ったのかと聞かれても全く答えられない。女性客4名は水だけで静かに食事をしていた。これでは再来するとはとても思えない。

5,000円で13品メニューを出すならば、アラカルトにあるような料理を2品で5,000円のほうがはるかに評価されると思う。

もう1つ気づいたことがある。それはワインリスト。さほど充実していないワインリストだが価格は一昔前のもの。

東京では5,000円程度で飲める赤ワインを8,500円で注文した。その後、多少物足りなかったのでワインリストからどこにでもあるワインを選び若いウエイトレスに追加注文をした。

10分は待たされたであろうか?明らかに休憩されていた黒服の方が来られ「このワインは品切れです」と言う。

朝からソムリエバッチを付けたスタッフが働いている。グランドメニューは客単価1万円を超える。昔ながらのオーソドックスなワインを割高価格で提供する。

このようなレストランで明らかに何年も変えていないワインリストを毎日出し続けて、どこにでもあるワインを「品切れです」はないだろう。

この街のディナーのマーケットプライスは5,000円。グランドメニューを客単価5,000円に替えなければ客は来ない。

グランドメニューにあわせてワインリストの内容や価格も変えなければ客がついてこれない。サービスは黒服が責任を持って注文を聞くようにすべきだ。(そのための黒服)

こうして5,000円の満足を提供していれば徐々に客が増える。会計を済ました客はこう言う。「このこホテルは評判どおり美味しかったね」と。

中国料理の美味しいと評判のレストランでも、同じ5,000円の品数多いコースをいただいたが全く同じ内容の営業であった。

地方のホテルで繁盛しているレストランは、今流行(はやり)のトレンドを研究している。客の嗜好は激流のごとく変化し続けているから。

 

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