ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」  

第七部 外から見たホテルビジネス 2002年〜

2003年9月22日更新 

温泉観光ホテルの現状

私が社会にでた二十数年前の社員旅行は必ず温泉ホテルに行っていた。おそらく十年前まで毎年どこかの温泉ホテルへ団体で行っていた。

不思議なことにこれまで行った温泉ホテルへ、再び行きたいとは思わなかった。最近の社員旅行は温泉ホテルを希望する人などいなくなった。

この度、仙台の仲間達10名が揃って「温泉観光ホテル」に行こうと話しがまとまった。

新聞やシティ情報誌などに多くの温泉ホテルが広告を出している。(旅行会社不介入)

仙台駅から車で30分のところに有名な温泉地がある。その中で有名な大型ホテルがこんなプランを出していた。

1泊2食のホテルプラン9800円。10名そろうと仙台駅まで無料バスの迎えあり。

2003年の9月の平日に仙台駅で待ち合わせて、本当に久しぶりの温泉ツアーとなった。

ホテルの玄関には家族連れの名前が7組、我々のような団体客名が2組書かれてあった。どう考えても暇な日になるのだろう。

ロビーに入るとラウンジの席でお待ちくださいと言われた。間髪いれずに「本日午後8時にここでビンゴ大会があります。1枚500円でもれなく景品が当たります。」というセールスを受けた。景品はこどものおもちゃ。

風呂上りに生ビールをいかがですか?という看板があった。サービスタイムは生ビール500円と書いてある。定価は750円なのだが別にサービス価格とは思わない。

懐かしい雰囲気の部屋だ。あいも変わらずに男4名がここで寝る。

温泉に入って出たところでプラスチックコップの一口ビールが200円で販売している。なんとも商魂たくましいこと。(でも飲んだ)

夕食の宴会のはじまりです。本来は座敷で盛り上がるのだが、私があぐらがかけないので椅子席のコの字の会議室に料理が並べられた。

この料理は何の驚きもない平凡以下のレベル。温泉ホテルの楽しみは料理なのだが。

ドリンクは飲み放題2時間3000円。(勿論サービス料は別)

飲み放題の2時間があっという間に過ぎてストップがかかる。そうか飲み放題は客を追い出すのにはもってこいの商品だ。ということでやんわりと追い出された。

ロビーのビンゴを見に行く。多くの家族連れがシーンとした雰囲気の中でビンゴをしている。50名くらいいるのに暗い。司会者が悪いのだろうな。

100名くらいが入れるカラオケステージのある店に行くが誰もいない。料金は飲み放題3000円といわれる。(90分)他にやることも無いのでここで楽しむことにする。

後で聞いたのだが、別にカバーチャージが1人500円とカラオケ1曲200円とサービス料が加算されていた。

90分で追い出された。料理をあまり食べなかったので小腹が空いた。麺どころが営業していたので入った。

ほぼインスタントのようなそばやラーメンは800円以上する。中ビンビールが800円。当然サービス料が加算される。

次の日の朝食は200名は入れる宴会場でブッフェです。ご飯以外のすべての料理は調理づみレトルト食品を並べているだけ。「コーヒー」と言えば「別料金ですが」と言われる。

チェックアウト時に大きなたすきがかかって「朝市」で物を売っている。ご当地の名産品はほとんど置いていない。

我々はこのホテルに20万円以上を支払った。一人当たり2万円を超えたことになる。我々は個々の支払いなのでさほど大きな問題ではない。

これがこの日泊まっていた多くの家族連れとなると大きな問題になる。家族6名で1人1万円以下の宿泊に来たのにホテルへの支払いが12万円になるとは誰も思っていないだろう。

これまでの温泉ホテルへは社員旅行などで来ていたから自分の懐が痛まない。飲んで騒いで幾支払ったかなど考えたこともない。

それでもまた行きたいと思わないから温泉地や観光ホテルが衰退している。今回訪れたホテルも含めて個人客が自分でお金を払っても納得して「又来たい」と思わない限り売上は確実に減ってくる。

今回行った10名の誰もが「また来ようね」と言わない。それよりも恐ろしいことは「あのホテルには人を紹介できないね」という口コミ評価が加速して広まっている。

 

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