ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」
第七部 外から見たホテルビジネス 2002年〜
VIP トリートメント ホテルの関係者であればVIPトリートメントとは何かがお分かりであろう。 宿泊するゲストの中でVIPと言われる重要客や常連顧客やその他の理由で、宿泊部屋に何かを入れてごあいさつ文を添えることをVIPトリートメントと言う。 一般的なトリートメントは、フルーツバクセットやシャンパンセットなどが多い。 最近、私の宿泊する部屋にこのVIPトリートメントとしてフルーツバスケットが入れられている。 ホテル側としては「あなたは特別なゲストです」という意味で「歓迎」という意思表示として「物」を入れる。 ゲスト側とすれば「私を特別なゲストと思ってくれる」という気持ちは充分嬉しい。だが、その入れられるものが本当に嬉しいものかどうかが今回の意見。 私の部屋に入れられる「フルーツバスケット」は、一度も触られることが無く「お手数ですが、下げてください」というメモとともに客室係りに下げられるだけのものなのだ。 このホテルの飲食施設は午後11時にすべてが営業終了する。つまり、午後11時以降にホテルではルームサービスも含め飲食することが出来ない。 夜が遅い私はどこかで食事を済ませてホテルに戻るしかないのである。 私がホテルに戻る時間はいつも午前0時前後になる。町で食事を済ませほろ酔い状態でホテルに帰ってくる。 そんなおじさんがフルーツをむいてニコニコ美味しそうに食べるだろうか。次の日の朝も常温のフルーツに手が出るだろうか。 バスケットごと会社に持っていって女性社員にプレゼントできるだろうか。何に入れて持ち出せばよいのだろうかと悩む。もらった方も持ち帰るに困るのではないかと悩む。 つまり、私の部屋に入れられるフルーツバスケットによって、私の悩みが生まれると言うことになる。(かなり大げさですが) 私はこのフルーツバスケットを眺めながら過去の自分を思い出した。 ルームサービスではその日部屋に届ける「VIPトリートメント」リストが届く。各ランクごとにVIPトリートメントを作って、指示された部屋に届けるだけである。その人がこの届け物を見てどう思うかなど考えた事もない。 ゲストは届け物と一緒にホテルの気持ちを理解するが、本当に嬉しいものかどうかは別問題と言うことである。 これは提案であるが、そのゲストにとって驚き喜ばれる「VIPトリートメント」とは何であるかを考えた。 ・ボトルキープされたメインバーのメンバーズカード これをもらえばメインバーには必ず行く いただいたボトルを飲み、おつまみを頼む。やがてこのバーの顧客となる。(原価はしれている) ・ミニバーのドリンクを飲み放題 別に飲まなきゃ損などとは思わないが「かなり嬉しい」には違いない。(全部飲まれても原価はしれている) ・その土地の名産品「乾き物おつまみセット」 これをつまみにミニバーのドリンクを飲む。飲まなくてもバックに入れてお土産として喜ばれる。 こうして考えると「驚き喜ばれる」VIPトリートメントはいくらでもあるはずだ。 他のホテルでは出ない「驚きのプレゼント」を考えてみたらいかがでしょうか?
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