ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第五部 福島ホテル&ゴルフリゾートビジネス 1997年〜1998年

2001/10/26  更新

私たち辞めます

このリゾートのお客様は70%が関東圏から来られる。法人会員を含め一流企業の役員クラスが多い。

施設を含めたハードは東北でトップクラス。それに比べソフトは素人の集団であった。電話の対応、身だしなみ、挨拶などの基本もなっていない。

私が館内を廻っているとあちらこちらでお客様が怒鳴っている。

このリゾートは雪が降る。12月から3月の間はクローズである。私が赴任する3ヶ月前に社員が28名も退職している。

会社からの私に対する最初の指示は、この多くの退職者を出した原因と思われる料飲責任者とキャディマスターの解雇であった。

ほとんど話をしたこともない人を、事務所に呼び出しての解雇通告であった。そして彼らは私を個人的に恨んだこととなった。

通常では解雇をしたら、それに代わる人材の補充があるのだが全くない。この嫌な役をさせるために私を呼んだのではと疑った。

施設的には料飲担当が23名いるのだが、20才前後の若いスタッフが4名しかいない。6月はゴルフのハイシーズンでとても回らない。

地元には配膳会組織がない。わざわざ東京から泊りがけでヘルプに来てもらっていいる。配膳1人あたりの経費は社員の2倍以上である。

4名しかいない料飲サービスの女性社員3名が、私の事務所に来て「私たち辞めます」と言った。朝から夜まで必死で頑張っているが、お客様には怒鳴られてやってられないがその原因。

私が「明るく楽しい職場つくりを約束するからもうしばらく我慢してくれ」と頼みなんとか残ってくれた。

なにもかも悲惨な状況であった。泣いている暇はない。今日もVIPゲストが怒鳴っているのだから。

 

この原稿は2001年作成

2006年再読

第五部の目次へ