ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第六部 関東ブライダルビジネス 1999年〜2002年

2002/3/15  更新 

持込の罪と罰 カメラマン

私がまだ人を疑うことを知らなかった頃、新郎新婦から「友達にカメラマンがいるので、その人に頼みます」と言われた。

何の疑いも持たずに「いいですよ」と答えてしまった。これによりカメラマンの持込となった。

このお二人の結婚披露パーティ当日の出来事である。友達なのに招待客としての席がない。若い学生風のカメラマンは汚い服装でやってきた。招待客やスタッフはフォーマルウェアーなのに。

招待客からこう言われた。「あなたね、従業員にはちゃんとユニフォームを着せなさいよ」と。

持っているカメラはとてもプロ用とは思えない安物。この人の仕事は、依頼者のお二人の写真を撮ることだけ。

明らかにブライダルゲリラ業者からの持込カメラマンである。

新郎新婦の後ろを付いて入場したり、進行などは全く関係なく所かまわずシャッターを押しているだけ。

料理を持ったウエイターの進路を妨害している。ウエイターは一刻も早く料理を届けようと走っているのに何度も「すいません」と言わなければならない。

だんだんウエイターの士気が下がっていく。美味しい料理を届けるからカメラマンに衝突しないようにとサービスが変わってくる。

もし、衝突してお客様の服を汚した場合、誰が責任を取るのでしょうか。我々のチームにたった一人の他人が入っただけでサービスのクオリティが大きく低下する。

しばらくするとゲストの見える位置で一服が始まる。又、招待客から苦情を言われそうになったので「やめろよ」と言ってしまった。

このカメラマンは、サービスがどうなろうが関係ない。会場の人になんと思われようが全く関係ない。

とにかく注文された枚数だけシャッターを切ればいいのである。このような事例は、持ち込みカメラマンの場合必ず起こる。

これがブライダルゲリラ業者から派遣された専門学校の学生カメラマンの実態だ。ホームページなどで堂々と「友達と言えば持込料などかかりません」とまで言っている。

2002年4月号のゼクシィには写真とビデオ情報として20ページにわたり持ち込み業者の広告が出ている。

1ページの広告料は軽自動車の新車1台分だろう。ある広告にはこう書かれている。「花嫁の期待以上の完成度!300カット39800円」

あるホテルのスナップ写真は300カットで17万円である。雑誌に出ている写真はその会社のトップカメラマンのもので実際の出来上がりを保証するものではない。

ホテルの半額以下の値段を出している業者のカメラマンは、日給8000円のアルバイト。

安かろう悪かろうと許してもらう。苦情担当の専門家を置いている。後悔するお二人は責任を追求することもできない。

広告料のコストを考えると、どれだけの新郎新婦に持込をけしかけなければいけないか。

一度持込に成功するとその会場のアルバムを保管する。新しく来られたお二人に挙式会場を聞き出し「そこは私どもが入っています。ここにアルバムがあります」と言って騙す。

現在、我々は決定前に持込の有無を聞いている。持ち込み予定がある場合、内容の確認もさせていただいている。ブライダルゲリラ業者の魔の手が伸びるのを最初から防止している。

これは売上の確保で言っているのではなく、ご招待客がこころから喜んでもらうために責任をもてるかどうかの判断である。もてないと判断した場合、なんと言われても予約を受けない。

ホテルマンの皆様、組数を増やすために持込オーケーと言うのは責任逃れですよ。

これから結婚を考えているお二人は、くれぐれも気をつけていただきたい。当日何度もいやな思いをしているお二人を見てきましたから。

注:この原稿は事実を元に書いておりますが、すべての業者がそうであると断言するまではできません。反論をお持ちの方は掲示板に投稿願います。2002/3/15現在

この原稿は2002年作成 2006年再読

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