ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」   たべもんや三度笠 

平塚 カレーとたこ焼 しゃらく  2002/5/28

私は湘南・平塚に2001年4月に引っ越した。

私の住むマンションの前に小さなフランス料理屋があった。

店の前に立っても入ってみようとは思わなかった。

半年後に突然「天丼屋」に変わった。勿論、入ろうとは思わなかった。

その後1ヶ月もやっていただろうか、その天丼屋は気がつけば閉店していた。

同じ場所に、2002年冬に目立つ看板を掲げた変な飲食店がオープンした。

「カレー&たこ焼き」のしゃらくという店。私はとても不思議に思った。

カレー屋かたこ焼き屋なら行ってみようと思うのだがカレーとたこ焼きでは???

 実はこの店個人的にとても気になっていた。はたして客は入っているのだろうか?

どんなカレーとたこ焼きを出しているのだろうか?でも入る勇気はなかった。

5月28日午後7時に突然「この店のたこ焼きを食べてみよう」とひらめいた。

とても店内でいただく勇気はなかったのでお持ち帰り作戦をとった。

ライトアップしている店のドアーを勇気を出して開けた。

店内は意外に広く、正面の調理場にカウンター6席テーブル4卓がある。

午後7時に客は一人もいない。

元気よく「いらっしゃいませ!」と笑顔で言う20才くらいの可愛い女性。

調理場にいる20才くらいの男性も「いらっしゃいませ」と笑顔で私を迎えた。

「すいません、たこ焼き2人前を持って帰りたいのですが」

「お焼するまで20分お時間いただきたいのですが」

「それでは20分後に又来ます。お金払っておきます」

「はい、2人前で700円でございます」「う、安い」

こんな若いカップル(多分夫婦)がやっていたのか。正直、驚いた。

20分後に再来した時、まだ出来ていなかった。

本当に一生懸命たこ焼きを焼いている彼、横で見つめる彼女。

久しぶりに新鮮な光景を見せてもらった。私は「がんばれよ」と心でつぶやく。

丁寧に箱に詰められた「たこ焼き2人前」を抱きかかえるように持ち帰った。

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たこ焼きの入れてある箱を見て驚いた!

何とフランチャイズチェーンではないか。(移動自動車販売のFS)

あの若い二人は、フランチャイズチェーンに大金を払って指導を受けているのか?

確かに店周りはデザイナーの仕事に見える。ではなぜ?カレーとたこ焼きなのだ。

あまりにもひどいマーケティング。とてもプロ集団の仕事とは思えない。

色々考えながらたこ焼きを食べた。

「まずい」

このひどい味に涙がでてきた。

一生懸命働くこの若い二人に本部はいったい何を教えているのだ。

私は何とか助けてあげる方法がないかと考えた。その後、ずっと考え続けた。

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追伸

2002年6月9日 私が大阪に旅立つ前日

この店のドアーに次のような張り紙が出た。

「6月9日をもって閉店いたします。これまでのご愛顧ありがとうございました」

(最初の店の写真)

あの若い二人はいったいいくらの借金を背負って、これからの人生を歩むのか?

私はその張り紙を見ながら、かなりの時間たたずんだ。そして泣いた。

 

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