ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第二部 グァム海外リゾートホテルビジネス 1991年〜1995年

H リゾートビジネス 私のアイデア

2001/8/28更新

シティホテルから学ぶものなし

この話は私の経験から導いた結論である。意義異論も多いかも知れないが理解されたし。

いわゆるリゾートホテルのレストランはシティホテルレストランを目標にしている。20年前、沖縄那覇のリゾートホテルダイニングでの話。

大阪のシティホテルからレストランスタッフが食事に来る、みんな気合を入れてサービスするように。これが私の友人のマネージャーがスタッフに言った言葉。

我々(8名)の格好はどちらかというとカジュアル。サービスするスタッフはタキシードを着ていた。ワインを注ごうとするのだが手が震えてワイングラスに注げない。

新婚さんがタンクトップに半ズボン、ビーチサンダルで入ってきた。マネージャーは後に「あの人たちの格好は見られなくなかった」と言った。

このリゾートホテルに働く人たちは相当シティホテルを意識していた。沖縄の多くのリゾートホテルでタキシードを着たスタッフを見かける。

所は変わって、三重県の有名観光ホテルの有名なダイニングルームでの話。お昼なので気軽にカレーを食べようと寄った場所。黒服2名が2台のワゴンでカレーとライスを運んできた。極めてめずらしいカレーとライスのワゴンサービス。(5,000円)

私が働いていた地方のホテルでもサービスの目標は東京のホテルと言っていた。

つまり、リゾートホテルは、リゾート地でシティホテルのサービスを提供しようとしている。リゾートに出かけているのにシティホテルのサービスではかなりの違和感。

数年前にホテルで「メートルドテル」コンテストを実施した。私は筆記試験の問題を考え採点まで担当した。この筆記試験の内容はかなり難しくつくった。(自分もわからない)

結果、上位はすべてリゾートホテル勤務者であった。それに比べシティホテル勤務者の知識の乏しさにはびっくりした。お話にならない。

優勝者はフレンチレストランを持たない沖縄のリゾートホテルから出た。筆記試験も実技試験もほぼ完璧。日頃から相当勉強していると感心させられた。

私はシティホテルでもリゾートホテルでも働いた。その結論は、シティホテルにある技、ない心。リゾートホテルにある心、ない技。

リゾートホテルで働く多くの人は、お客様をおもてなしする心をもっている。だが、サービスする技を教育する人がいない。だから、本などから独学で勉強する。すると、限りなくシティホテルのサービスがいいと錯覚してしまう。

リゾートホテルで働く皆様に申し上げます。「シティホテルから学ぶものなし」

私ならこう考える。

ビーチにあるカジュアルレストランに、タンクトップと半ズボンの新婚さんが来店された。

ソムリエと書かれたTシャツを着たワイン係が「今日のお勧めはよく冷えたワインです」と言う。料理も地元の食材を使った本格的なフレンチ。コックさんもオープンキッチンで麦わら帽子をかぶって調理している。

スタッフ全員がTシャツに半ズボンで心からの笑顔サービス。

訪れた新婚さんは「こんな快適でおいしいレストランがあったのか」と驚き、毎年訪れるようになる。

リゾートにしかできないサービスが必ずあります。お客様の心を読んで全員で「リゾートにしかできないサービス」を考えてみてはいかが。

 

この原稿は1995年作成、時代錯誤のご理解をお願い致します。

2006年再読