風速９０メートル　台風「オーマ」直撃

天災だけはどうしようもない。 ホテル閉鎖になる大きな天災に遭遇する可能性は少ない。それが２年間で２度も遭遇してしまった。死者がでなかったことは不幸中の幸い。ホテルマンとしてお客様の安全を守る使命があるかぎり、命がけの仕事となる。

１９９２年８月２８日（金）にぎわった夏休みも終ろうとしていた。月間の予算達成が見えていた。私は８月３０日からロタ島にバケーションに行くことを楽しみに頑張っていた。

家族連れ８５０名が泊まるほぼ満室のホテルに超大型台風の直撃があった。その当時の日記から転記する。

８月２８日（金）

３日前からトロピカルストーム（熱帯低気圧）「オーマ」がグァム周辺で停滞していた。本日午前３時にコンディション１（12時間以内に台風が来る予報）になった。自宅では断水に備えてバスタブに水を貯めることも忘れていた。せいぜい数時間風が強いだけだろうと考えていた。

上司から明け方電話があり早急に出勤するようにと。外は徐々に風が強くなりはじめた頃に出勤した。

午前１０時から幹部社員と日本人派遣社員で台風ミーティングが開かれた。予報では午後１時から５時が山である。本日午後の飛行機は全て欠航。

外で遊べない子供たちの為に、マジックショーやカラオケラウンジの開放、スカイレストランの特別営業、外からしか行けない1階のレストランのクローズなどの指示が出た。

午後２時、私は２階ロビーで子供たちを集めてマジックショーの司会をしていた。ロビーを完全密封にしているシャッターがガシャガシャと大きな音を立てる。このシャッターは風速１００メートルでも壊れないと工事の人に聞いていた。

その時、停電と断水が同時に起こり非常電源に切り替わった。風雨はかなりきつくなっている。

午後３時、完全密封のシャッターが「ガッシャー」と大きな音と共にぶっ飛んだ。同時にロビーに大量の水が入ってきてあっという間にひざまでつかった。「ブーブー、非常事態発生、皆様はすぐ部屋に戻ってください」ロビーにいるお客様を部屋へ非難させる非常放送が流れる。

エレベーターもすべて停止し、外は真っ白でまったく何も見えない。緊急配備についた。

ロビー（３階）より下の階の各施設に大量の水が流れ出している。１階メインバーの扉から水と風が吹きこんでいる。大量のタオルでふさごうとするが、まったく役に立たない。もし、この扉がとばされたら「私は死ぬ」と思った。

仕事で役に立たないと思っていたスタッフがヘルプにきた。災害になれているにしても彼らの働きには目を見張るものがあり本当に助けられた。

島の被害情報もラジオから入ってくる。○○部落全滅、○○村半壊など、スタッフの住んでいる村も相当な被害だとわかった。家族など心配だと思うがホテルのお客様の為に頑張っている。

コントロールセンターにはかなりの被害が報告されている。宴会場はすべて水浸し。ディスコの音響設備全滅。ロビーの天井が剥がれ落ちた。などなど信じられない状況になった。

約４時間の暴風雨が収まりまったくの無風になり青空となった。なんと、台風の目に入ったのだ、信じられないが台風直撃です。

その２へつづく