ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第二部 グァム海外リゾートホテルビジネス 1991年〜1995年

A 感動のリゾートとは

2001/7/30更新

はめられた観光客

リゾートに働く私が、このような旅行業界の内部告発に近い話をするのを許していただきたい。この話をする目的は、お客様の満足感がなくてはリゾートビジネスは衰退するから。

それでは3泊4日のグァム旅行への出発です。

グァム空港に着いたお客様は、入国手続きと税関審査を終えてロビーに出てくるのが1時間後。ロビーでは旅行会社のお迎えがあります。早く出てきて喜んでも全員が揃うまでバスは発車しません。(この全員とは全てのホテルのお客様です)

バスが発車しても順番にすべてのホテルを廻ってお客様を案内する。(他の人はバス内でひたすら待たされる)ようやくホテルに到着。同じバスで来た全員がツアーデスクに集められ、オプショナルツアーの説明を受ける。

グァムではオプシナルツアーを申し込まないとどこにも行けないと説明され、ここで申し込まないといけないと言われる。気に入ったツアーがあれば何種類も申し込む。

例えば、ディナークルーズに行きたい食事券を持っているお客様の話。「ディナークルーズに行きたいのですが、食事券を持っています」「そのお食事券は$10で下取りいたします」「お願いします」「では$85から$10を引いて$75のお支払いです」

ではこの人はいくら払ってディナークルーズに行くのでしょうか。まず、日本でお食事券代8,000円。グァムの食券価格は3,500円。それを1,000円で下取り。なんと15,500円を支払ってます。

早く部屋へ行きたいお客様も決してカギを渡してくれない。全ての人のオプショナルツアーが申し込んで初めて部屋にたどり着く。グァム到着から3時間も経過している。

疲れている暇はありません。次の日、午前8時から午後4時まで市内観光に出かける。観光は2時間程度で終わり、ひたすら旅行会社契約の免税店めぐり。興味ない人も自分勝手には動けない為、待たされる時間は多い。

帰ってきたら夕食のオプショナルツアーに午後5時に出かける。ディナーグルーズやディナーショーやバーベキューやドッグレースなど。帰ってくるのは午後9時以降。

3日目も朝からオプショナルツアーに出かける。例えばゴルフツアーの例です。スタートは午前9時だがお迎えは午前6時頃。これはホテルの朝食も始まっていません。ゴルフ場で食券で朝食が食べれるから連れ出す。ハーフが終ると必ず昼食休憩がある。くたくたになってホテルに帰り着くのは午後5時前後。え〜、これからオプショナルツアーの人も多い。

オプショナルツアーに行かない人は、町で貰った日本観光客向けの新聞を見る。韓国カラオケクラブお1人$5で送迎付の日本語OK。電話して迎えに来てもらう。1時間唄って請求金額はお1人$100以上。大声で「お前ら馬鹿にするな」と言って金を払って出て行く。ホテルまでの送りは当然無い。カラオケクラブ提携の韓国人タクシー運転手にもぼったくられる。

もう次の日には日本に帰らなければならない。旅行会社の引いたレールを走るだけのグァムの休日。これをはめられた観光客と言ってもいいのではないか。これに気づかないはめられた観光客は「グァムは日本語が通じるし日本人ばかりで日本みたい」と言って帰っていく。

現地の人々が生活するアメリカを見ることも感じることもない。これが多くの旅行者のグァム旅行のパターンである。

次は私が演出する感動的なグァムツアーをご紹介する。

 

この原稿は1995年作成、時代錯誤のご理解をお願い致します。

2006年再読