ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第二部 グァム海外リゾートホテルビジネス 1991年〜1995年

A 500室の巨大ホテル開業

2001/7/23更新

スタッフの採用すらできません

面接について日本との違いを説明する。

グァムに住んでいる人は約13万人である。多い順からチャモロ人(現地人)、アメリカ人、中国人、フィリピン人、韓国人、日本人。折からのホテル建設ブームに乗り人材不足は深刻であった。

グァムはアメリカ大統領の投票権がないアメリカの準州である。アメリカの法律により、ホテル従業員はアメリカ国籍か、永住権か、労働ビザをもっていないと雇ってはいけない。(島の人に限られている)

従業員のレベルを見る為に他のホテルを見て回った。ウエイターはダイニングルームでガムを噛んでいる。ポケットに手を入れている者もいる。聞くと、注意するとすぐ辞めるそうだ。明日には違うホテルでガムを噛みながら働いている。

開業準備室には多くの履歴書が送られてきた。FMラジオでキャンペーンを実施した為。

アメリカの場合、履歴書には写真は貼っていない。写真で肌の色が分かり、性別が分かり、だいたいの年齢が分かる為である。採用条件には性別、年齢など一切書いてはいけない。理由は、その全てが差別になるから。

書類選考はできないため、全ての応募者に会わなくてはならない。私の面接は各バーセクションのマネージャーである。日本人1人では面接させてくれない。面接で差別に関することを無意識に言ってしまうと訴えられるから。必ず現地の総務担当者が私につく。

さすがに自分を売り込むことには慣れている。(言葉が完全ではないのでそのような気がする)聞いていると、全ての人が仕事のできる素晴らしい人に思える。「ん〜この人採用する」とすぐ言ってしまう。この勘違いがとんでもないことになってしまう。

実際に働き始めたらとんでんもない無能者である。次は、解雇する為の膨大な書類を英語で作成しなくてはならない。日本でいう始末書を10枚くらい集めなくてはいけない。半泣き状態で時間だけが過ぎていく。

マネージャー以外のスタッフ採用は現地の人に任せることにした。面接に訪れた何百人はビーチサンダルによれよれのT−シャツ姿。人材不足と、長続きしない国民性を考慮して全員採用になった。

採用されたスタッフのユニフォームが合わない。日本人の場合、S/M/L/LLの割合の統計がありほぼそのとうりに収まる。ある現地スタッフは上半身がSで下半身がLLなのである。半分以上のスタッフのユニフォームを再注文。届くのは3ヶ月後。

このままではオープンする日にスタッフのユニフォームはビーチサンダルにT‐シャツ。

だんだん暗い気持ちになってきた。もう開業準備の苦労は省略してホテル開業に進みます。

 

この原稿は1995年作成、時代錯誤のご理解をお願い致します。

2006年再読