ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」
第六部 大阪ブライダルビジネス 2002年〜2003年
レストランウエディングの損得勘定 2002年7月の末に、大阪キタにあるレストランがウエディングビジネスから撤退した。10年以上もレストランウエディングを実施していた老舗なのに・・・。 私の先輩が仕切るレストランである。ブライダルを始めた10年以上前は毎週土日に必ずウエディングがあったとのこと。 撤退を決断させたのは、月3回程度しかウエディングが入らなくなってしまったから。結局、このレストランはウエディングを始める前より売上が下がったようだ。 最近ホテルのレストランでもウエディングが出来ると宣伝している。おそらくホテルマネージメントの考えはこうだ。 会社需要が激減した宴会ビジネスでブライダルはおいしいと考えている。大安に宴会場がいっぱいでせっかく来た客を断らなければならない。 一件あたりの売上を考えるとブライダルは明らかにレストランの売上を上回る。ならば、レストラン営業をやめてブライダルを取ったほうが儲かると。 こだわるレストランスタッフの意見を一切無視して「ブライダルを取れ!」とトップダウンの指示が出る。上司の指示に弱いサラリーマンホテルマンは「イエス」と従う。 7月のある日、大阪では一流と評価の高いホテルのレストランで食事をしてた。客も多くいい雰囲気で楽しい食事であった。 その時、明らかに宴会予約の男性スタッフがレストランの中に結婚を考える新郎新婦と母を案内して来た。 私の楽しむテーブルの近くで、「ここでウエディングをいかがですか」とセールスしている。私はその場で苦情を言いたくなるほど雰囲気が急に悪くなった。 おそらくこのレストランはウエディングが入っている時、一般営業を犠牲にするのだろう。エントランスに「本日は貸切パーティのため営業をしません」と書くのである。 せっかくレストランの食事を楽しみに来た客の気持ちなど全く気にしない。一度でも好きなレストランが土日貸切で利用できなければ次に行く時安心できない。 これが再三あると、やがてそのレストランには行かなくなる。 宴会場が一杯なときだけ、レストランでウエディングを取る。この目先の売上を追求するホテルマネージメントの考えはレストラン自体の売上を下げる。 レストランウエディングは初年度の売上から比べると年々減少をたどる。この原因に気づいているホテルマネージメントは何人いるのか? ブライダルビジネスはそんなに甘くない。女心と秋の空のように花嫁さんの気持ちはコロコロ変わる。 そこにレストランポリシーなど全く通用しない。花嫁さんに合わせてレストランを変えられるか?そうすれば一般客の誰もがレストランに来なくなる。 これで分かったか。レストランの損得勘定を考えたらブライダルに手を出すのは辞めた方がいい。 関西ゼクシィを見ていると、多くの一流ホテルのレストランが「レストランウエディングできます」と書いてある。 何度も言うが、ブライダルビジネスはそんなに甘くない。レストランの売上と比較して手をだすビジネスでは決してない。
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この原稿は2002年作成 2006年再読