ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第四部 東京お台場アーバンリゾートホテルビジネス 1996年〜1999年

2001/10/11 更新

無視されたという苦情

1996年4月から夏休みが終る8月末まで、苦情処理が本当に多かった。

これまでのホテルマン生活を振り返ってみた。苦情の原因を分析すると、そのほとんどがこちらサイドに非があった。

食べ物に虫や金タワシやラップなどが入る異物混入。注文をいただいた料理を出し忘れていた。このような初歩的なミスでお客様に迷惑をかける。当然苦情になる。

こんなこともあった。接待のゲストに値段入りのメニューを出した。その逆のパターン。主賓からのサービス順序を間違えてしまったなど。これも勿論苦情になる。

これらの苦情に関しては弁解の余地はない。心からお詫びするし償いもさせていただく。

お台場のホテルは、いままで体験したことがない苦情が多くあった。それは「私を無視した」という苦情である。毎日必ずあった。

私は冷静にその状況を見ていたが、レストランの玄関で1分間に5組以上のお客様を断らなければならない。

「只今、お席は満席でございます。2時間の待ち時間でございます」と言うしかないのだ。

それで諦めて帰られるといいのだが「なんで満席なの」とか「他に空いているレストランはないの」などの質問があると収拾がつかなくなる。

そこでレストランの前には黒山の人だかりが出来て蜂の巣を突ついた状態になる。

お1人お1人に対して丁寧なご説明など事実できなかった。そこであしらわれたお客様はアシスタントマネジャーデスクに苦情を言いにいく。

そこで私が呼ばれお話をお伺いする。「○○料理のレストランの対応はなってないわね」「申し訳ございません。何か失礼がございましたでしょうか」

「失礼なんてもんじゃないわよ。この私を無視したのよ。とんでもない話だわ」と言われる。

加えて「私は、都内の○○ホテルでVIPよ。どうしてくれるのよ」とくる。「じゃそのホテルにいってくださいよ」なんて口が裂けても言えない。

延々と「私はVIPよ」と言う話を聞かされる。その後決まって「早く席を用意して」とくる。それでも席のご用意はできない。やがて捨て台詞を残して帰っていく。

この「私を無視した」苦情に対して私が指示したことは「看板を出せ」だった。そこに人が居るから苦情になる。「只今満席でございます。約2時間の待ち時間でございます」という看板を出した。

玄関係は表に出ないで、看板という防波堤を越えてきた人に対して丁寧な対応をした。不思議にこのての苦情が激減した。

こんな不幸なホテルがあっていいのか。

よい子の皆さんは、このまねだけは絶対にしてはいけません。

この原稿は2001年作成

2006年再読

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