ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」 コラム
ボルドーのソムリエール フランスのワイン産地で有名なボルドーの話。とある年の夏に訪れた。 ボルドー市からタクシーで30分位郊外に走る。小高い丘の上にミシュランの2つ星レストラン「サンジェームス」がある。 夏の季節はガーデンにテーブルを並べて営業している。日本のように虫がブンブンしていることはない。 夕暮れになるとボルドー市の夜景が見えて、ジロンド川の川面に夜景が映っている。なんでおじさん同士で来ているのか不思議でお店に対して失礼である。
おじさん同士で腰掛けたテーブル せっかくボルドーに来たのでいいワインを飲もうと思うよね。ワインリストをじっくりチェックした。なんと私の生まれた年の「シャトーラフィットロットシルト1956年」があった。 多少ワインに詳しい方はこのワインがいかにすごいかご理解されるでしょう。日本ではあるはずが無いワインで、もしあっても50万円くらいするだろうな。 担当のソムリエール(女性のソムリエ)を呼んで「このワインはありますか」と聞いた。「ウイ」と軽く言われた。値段は3万円くらいと記憶している。 隣のテーブルではフランス人老夫婦が「アンジュロゼ」(2,000円位)を飲んで食事を楽しんでいる。 私はこんなすごいワインを注文したとき、ソムリエールはどんなサービスをしてくれるか期待した。特にお隣さんとのサービスの違いはなんだろうと思った。 ところがどっこい全く同じサービスである。もし日本でこんなワインを注文したら店中大騒ぎなのに。 私が思うにはワインを注文するゲストが、そのワインのことを良く知っているのだ。注文したワインの価格でサービスを変える必要など無いのだ。 この日のソムリエールは、誠実なサービスでゲストをおもてなししていた。勿論、私が生まれた年のワインは一生忘れられない「素晴らしい人生の味」であった。 もう2度と飲めないワインと分かっていた。そんなワインを何気なくついでくれたソムリエールも一生忘れることは無い。 ミシュランよありがとう。
幸せなのぶおじさん 夏の日暮れは午後9時 |