ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」
第一部 ホテルレストランビジネス 1982年〜1990年
第二章 オリジナルマーケティング戦略
客づくり 顧客獲得大作戦
2001/7/8更新
「いつものやつ」に答えるためには 大阪ミナミのお客様は特に顧客扱いされたい。過去に一度でも来店されたお客様は、自分は顧客だと思っている。 大阪ミナミのお客様はお席にご案内すると決まって「いつものやつちょうだい」と言う。 ホテルは定休日がないため、それぞれ交代で勤務している。毎日サービスするスタッフが違う。計算すると1人のウエイターが1人のお客様を担当する確率は5日に1度である。 「いつものやつちょうだい」と言われても「はい、かしこまりました」とは言えない。 私はなんとかこの要望に答える方法がないかを考えた。お客様嗜好ノートの誕生である。 本日の営業で来られたすべてのお客様のオーダーを記録しておくのである。ご予約以外のお客様の名前は分からない。その場合、服装・有名人にたとえたら・お連れ様の特徴・話した内容や好き嫌いなどを書いておく。 これは手間隙かかる大変な作業である。しかし「いつものやつ」に答えるためにはこの方法以外考えつかない。 3ヶ月が過ぎた頃、とあるカップルが来店された。6名いるスタッフの1人が以前の来店を覚えていた。さあ、嗜好ノートだ!!1人のウエイターが「この方です」と発見した。 0月0日午後7時、青いシャツにブレザー、俳優西田敏行に似ている。お連れ様は23才くらいの細身の美人。注文はキリンビールの後にアンジュロゼワインを注文。料理は1万円のコースを2つ。女性はにんにくと海老が嫌い。 この記録を瞬時に頭に叩き込んでキャプテンは注文を聞きに行った。 「いつものやつちょうだい」「はい、キリンビールでございますね。それともアンジュロゼのワインからにされますか」「え〜!ようおぼえとるな」と言われたお客様の顔は驚きでいっぱいであった。キャプテンの笑顔のやりとりが続く。「本日の前菜には海老が入っておりますので、他のものに変えさせていただきます」「え、うれし〜」 その時のキャプテンの顔は勝ち誇っていた。勿論、このお客様は何度も来られ「いつものやつちょうだい」と言い続けた。 毎日の作業量を考えれば「いつものやつ」に答える確率は決して高くない。しかし、この地道な作業を続けたことによって、多くのお客様が、ブレザーの方から、○○会社の○○様と変わった。 そして多くの顧客が生まれた。3年後には、来店ゲストのほとんどがこの顧客ノートに記録されているようになった。そして、膨大な売上げが前年を上回り続けたのです。
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この原稿は1994年のものです。少々時代錯誤の部分があることをご理解ください
2006年再読