ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第一部 ホテルレストランビジネス 1982年〜1990年

第二章 オリジナルマーケティング戦略

客づくり  顧客獲得大作戦

2001/7/7更新

心斎橋カップル獲得作戦

大阪ミナミは高級クラブも多い地区である。クラブの美しいホステスさんがお客様とお食事をした後にお店に行くことを同伴出勤という。同伴出勤のお待ち合わせがだいたい午後6時頃。

私はホテルのロビーが見えるレストランの玄関にいつも立っていた。ロビーを毎日観察していると同伴出勤の待ち合わせになっていることに気づいた。毎日、約30組のカップル(年配の男性と美しい女性)が待ち合わせだけして外に出て行く。

どこかのレストランで約2時間の食事をしてお店に8時に入るのである。ほとんどの高級クラブは午後8時オープン。おそらく人目が気になり、たいしたレストランでのご利用はしていないと思った。

私はこの客層の獲得を目標に掲げた。心斎橋商店街(すごい人出)を手をつないで歩けないカップルを「心斎橋カップル」と名づけた。

私のレストランの夕食は午後5時半からである。ピークは午後8時から9時の間。「心斎橋カップル」の利用時間は、多忙になる前の空いてる時である。鉄板焼のカウンター席で実施した。人目が気になると思い落ち着いて話のできる目立たない席を用意した。カウンターはお二人の距離が近く話がしやすくなるはず。

1時間半を有意義に過ごしていただける「うまいもの少しだけコース」を開発した。お客様へのセールスポイントは「ゆっくりできる」である。大阪ミナミと言う都会の雑踏から隔離してお二人きりの時間を過ごしていただく。おおむねこれが心斎橋カップル獲得作戦である。

これは成功した。(料金はお二人で2万円程度)

日に日に「心斎橋カップル」のご利用が増え、毎日コンスタントに10組の利用となった。売上げにして1日20万円である。静かに二人の時を過ごせるレストランの存在は口コミにて顧客が顧客を生んだ。

心斎橋カップルの男性が、次回違う女性と来店する。その逆もあった。そして、週末にはご家族(本当の奥様)で利用される。

その後8年間心斎橋カップルのご利用は増えつづけた。鉄板焼は早い時間から大人の雰囲気で満席が続くようになった。1年で6千3百万円の増収が続いた。(土日を除き平日×20万円)

このように誰に来て欲しいかと考えると、その人用にメニューを開発して、スタッフが演じる台本を書く。だから口コミでその客層だけが増えるのである。(この実績は正真正銘の事実)

 

この原稿は1994年のものです。少々時代錯誤の部分があることをご理解ください

2006年再読