ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第一部 ホテルレストランビジネス 1982年〜1990年

第二章 オリジナルマーケティング戦略

店づくり参考事例

2001/7/3更新

豪華レストランの総支配人になってくれ

1990年、私の担当するレストランは絶好調の業績を続けていたから業界でも話題であった。

ある日、調理師会の長老が訪ねて来てこう言った。「1ヵ月後にオープンするレストランを見てくれないか」

大阪ミナミのど真ん中のグルメタワーに300坪を超えるレストランである。経営者、料理長、店長に会って話を聞いた。経営者は不動産会社の社長でこの商売は全くの素人。

料理長はパブ程度の経験しかなく美味しい売れる商品を作ることができない。店長は街の小さな店の経験しかなくマネージメントが出来ない。集められたスタッフは経験の全くない学生アルバイト。

レストランはほとんど出来上がっていた。1日百万円を売らなければやっていけない。設備投資も5億円は超えているであろう。

不安になった経営者が調理師会の長老に相談したのである。実際に開業前の教育訓練に立会いいろいろアドバイスをしてやった。

その時経営者が「総支配人として助けてくれ」と正式に言った。提示された雇用条件も破格で「全権限を与える」とも言われた。

私は断った。

大阪ミナミで飲食店をやっていくことは戦争である。強力な武器が必要である。その武器が何もないのである。竹やりで戦争など出来ないのである。

3年後、久しぶりに大阪ミナミを訪れた。予想どおりそのレストランは存在していなかった。

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この原稿は1994年のものです。少々時代錯誤の部分があることをご理解ください

2006年再読