ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第一部 ホテルレストランビジネス 1982年〜1990年

第二章 オリジナルマーケティング戦略

店づくり参考事例

2001/7/3更新

大阪居酒屋戦争

御堂筋に面するオフィスビルの地下がすべて飲食店の「御堂ビル」がある。大阪ではほとんどの人が知る居酒屋老舗チェーン「百番」が入っていた。1人2千円の予算で十分楽しめる店としてかなりの入客があった。店員さんはかなり年配の方が多く、洗練されていると言うよりも家庭的であった。全体的にはかなり雑な感じであったが「ま、こんなもんやろ」と納得していた。

1987年、関東から居酒屋「天狗」が「百番」の横に進出した。天狗の店内はカントリー風でいかにも今風である。サービスや調理のスタッフも若く元気一杯。メニューも旬をアピールする産地を明記したもの。予算は百番と変わらない。

大阪ミナミの人にこの天狗が受けた。

若いアルバイトのハキハキ元気のあるサービスに新しさを感じた。待ち時間がでるくらい毎日満員御礼。私も天狗に通った。必ず百番の客入り状況を確認したが閑古鳥が鳴いている。

私は百番の次の一手に期待した。なんと百番がとった作戦は値下げであった。3名様以上大ビンビール2本無料。5名以上大ビンビール4本無料など。

しかしお客様は戻らなかった。

大阪ミナミのお客様は、安いからでは行かないのである。「百番」の店長は1番してはいけない単純値下げで急場をしのごうとした。店の中に問題が多いことには目を向けなかった。

・店の清潔さにかけていた。

・接客に誠実さが感じられなかった。

・サービスするおばさんが白衣に長靴ではね。

・調理場での雑談が客席にまる聞こえ。

などなど、店づくりで改善する点が山ほどあったはず。確かに年配の方々に苦情をいい店を良くしていくのは困難かもしれない。だが、責任者が苦情を言いつづけない限りスタッフや家族を路頭に迷わすことになる。

1年後「百番」は閉店撤退した。老舗と言えども安心していれば大変なことになる。生きるか死ぬかの戦争なのだから。

 

この原稿は1994年のものです。少々時代錯誤の部分があることをご理解ください

2006年再読