ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第一部 ホテルレストランビジネス 1982年〜1990年

第二章 オリジナルマーケティング戦略とは

その1 商品づくり

2001/6/26更新

フランス料理のガイドブック「グルマン」の話

少し前の話だが、フランス料理のガイドブック「グルマン」が発刊された。著者が実際に東京や大阪のフランス料理を食べて評価を書いた本である。毎年百軒以上の店の評価が載っている。(星の数で評価する)

私が担当するレストランは1つ星であった。つまり、フランス料理を食べる専門家にとってはさほど美味しい料理ではなかった。

勿論、この評論家だけを満足させる料理は作れたのだが、あえてこの評価に対して無視することにした。

私が担当しているレストランに来られるお客様は専門家(グルメ)ではないからである。9割のお客様が年に数回しかフランス料理を食べない人たちだから。

もしこの評価に対し専門家に受ける料理を出していたなら営業成績は下降線をたどっていただろう。(2001年現在、当時の3ツ星レストランで営業を続けている店があったとしてもほぼ赤字)

余談だが、その本の評価で我がレストランのスズキが「石油臭い」と書かれたことがある。全く心外である。

出版社に著者の評価に対して店側の反論を掲載することが公平ではないかと提案した。この本は評価する本というよりレストランを批判することが多く一般の人が見るとその批判をそのまま信じてしまうから。

その提案に対しては何の返事もなく、我がレストランの名前はその本から消えた。そして業績が上がった。

この業界で評価されてもレストランの業績と比例しているとは限らない。業界の評価でスタッフが幸せになるかどうかを考えてみよう。

この原稿は1994年のものです。少々時代錯誤の部分があることをご理解ください。

2006年再読