ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」  

第十部 ゲストハウスの中に僕がいた 2006年-

2007年6月8日更新 

独立秘話 その5

仕事が見つからない私に、昔の上司から1件のメールが入った。

「ある地方ホテルのマーケット内にT&G施設が開業して、ホテルの婚礼が激減している。なんとかならないか」

私はすぐにホテルのある地方へ飛んだ!

 

私は地方都市へブライダルの仕事に出かけるとき、必ず競合ホテルに泊まり、マーケット内の競合会場を見て回る。早速、T&Gの施設を見に行った。

これまでの施設では一番素敵に仕上がっているT&Gの施設

この施設は、1チャペル2バンケットで、地方都市らしくゆったりと大型に作られていた。この施設は、既存ホテルや結婚式場に対しては脅威である。

競合するホテル内にあるチャペル 全体的に素敵に作っている

それほど多くない競合施設を見て周り、自分なりに調べたマーケット事情などを持って依頼されたホテルに入った。

ホテルの事情

・年間150組あった婚礼が、このままいくと年間50組までいくかどうか。

・T&G対策として料理コストをかけて料理をテーマに売っていきたい。

・新規を決めるスタッフが辞めたので決まらなくなっている。

・チャペルが無い。(宴会場などに仮設)

私に期待する効果

・半年間に100組の予約を取って欲しい。

現状ではかなり厳しい状況である。ここで多くのホテルや式場様が勘違いをされている事情について説明をします。

T&Gなどブライダル大手の会社がマーケット内に新規出店する場合、T&G対策などで、もがく必要は全くございません。必ず、1バンケットあたり150組、2バンケットなら300組の組数を決めてマーケットから奪います。

T&G 電車の広告 テレビや看板や専門誌大量広告などかないませんよ

どのような手を使っても、いくらお金を使っても、死ぬ気で目標達成を目指してきます。既存店は、T&G対策ではなく、自社のマーケットから取られないようにする対策が必要です。

私に依頼したホテルは、T&Gが出てくることを知ってから、何も対策を取らなかったのです。逆に競合ホテルなどが明らかに、取られないための対策を講じておりました。

「半年間で100組の予約を積み上げるには、何をしなければいけないか」

私のブライダル施設再生のポリシィは、ハードの改造をテーマとしないことです。ハードのリニューアルやリノベーションはお金さえあればできる。

素敵に会場を作り直せば、それなりに必ず効果がでる。リニューアルオープンと書けば、必ず新規の客は来る。新しい素敵な施設を見せれば、決定率はあがる。

ハードにお金をかけないで、新規の客を呼ぶ。人的なスキルアップで決定率を上げる。これが私のやり方である。

私は地元で長年、ブライダルの司会をフリーでされているママに連絡して会った。老舗の旅館の和食堂で、会席料理を頂きながら、この地方都市のブライダル事情を聞いていた。

さすがに地元のプロの話は現実的で面白い。しかし、依頼ホテルの業績を上げるテーマにはいきつかない。これは無理な仕事かなと思い始めた時に、あることを思いついた。

私「この近くに、本物の教会はありませんか」 ママ「素敵な教会があります。毎日、自転車で通るのですが、この教会で結婚式をする花嫁は幸せだなと思います」 私「その教会は誰でも知っていますか」 ママ「誰も知りませんよ」

この話になった時には午後10時を回っていた。この教会がどうしても見たくて「連れて行ってください」とお願いした。その教会は、普通の真っ暗な住宅街にひっそりと存在した。

「これや、これしかない。こんなに可愛い教会、はじめて見る。すごい、すごい、すごい、ママありがとう」

 

赤レンガで作られた本物の教会 身震いするほど素敵だ

次の日にもこの教会を見に来て、色々調べて東京へ戻った。

私の提案書は、この教会で結婚式を挙げて、ホテルのバンケットで披露パーティをする商品を売るとした。

教会との独占契約の話、ブライダル商品の開発、各種製作物の作成、専門誌の広告、新規接客などなど。半年間で100組の獲得は他の人ではできません。

提案書「100組の獲得をお約束いたします。しかも、成功報酬で結構です。半年間、私が常駐してチームBMCが営業を担当いたします」

ホテルというのは大きな組織です。運営会社と経営会社と現地オペレーターの調整に相当な時間がかかります。今すぐに始めなければ効果は出ません。

やはり私の提案は流れてしまいました。何ヶ月も待ったがだめでした。一か八かの麻薬療法は過激でしたかね。自信はありましたが・・・・・・。

 

仕事を失った私に、地方ホテルの社長様からメールが入った。

「T&Gが進出してくるらしい。何か対策を打つ必要がある。アドバイスをお願いしたい。」

私は再び地方都市に飛んだ!!

 

幻となったウエディング商品

憧れのイギリス教会 当ホテル独占契約

♬ 街の小さな教会で結婚式を挙げました♪

皆様に素敵な絆と愛を配ります 「ありがとう」

 

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