ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」  

ホテルビジネスを考える 2005年〜

2005年04月26日更新 

高級外資ホテルVS老舗ホテル

2005年の4月に出張で大阪の高級外資ホテルと仙台の老舗ホテルに続けて宿泊した。

高級外資ホテルは設備も一流で快適そのもの。総支配人サイン入りの挨拶状から食前酒やフルーツの差し入れまで何もかもスマートでかっこよい。

ロビーに入ってから外資デザイナー独特の雰囲気を目にするだけで「すごい」とため息が出てしまう。私にはホテルの立派さに圧倒される弱みが生まれ、出来る限り人的サービスを受けないように振舞ってしまう。

ホテルマンの皆様もかっこよく学生さんが外資系のホテルに就職したいと願うのも納得する。

一方、仙台の老舗ホテルは高級外資ホテルの施設に比べると老朽化が著しい。ハード面では明らかに不利な条件だ。

このハードに対するハンデは、このホテルで働くホテルマンにとってどうにも変えられない現実である。しかし、このホテルの客室稼働率は高い。

予約の電話を入れた時点では満室でキャンセル待ちの状況であった。2度ほど電話で最新情報を知らせてくれて前日の夜にやっと部屋が確保されたくらいである。

私は1年4ヶ月ぶりに泊まったのだが、 以前の特別プランを適用してくれた。チェックインの時に私の知らないスタッフが対応してくれたが、「知らない人も働いているのは1年以上の時を感じるな」と思った。

チェックインだけして外出して深夜にホテルに戻ると、顔見知りのOさんがフロントにいた。なんと私の名前を言って応対してくれた。 「お久しぶりです。お元気ですか?」と親しみのある態度はホテルマンと客との間で自然とでてしまう。

過去のリクエストを記録しているのだろう「お部屋に加湿器をお入れして置きました」と言われたときの喜びは忘れられない。

このホテルの空調が不安定で一度「寒かった」とフロントに言ったことがある。この日の部屋にはわざとらしくベッドの上に毛布が余分に置かれていた。

ハードで見劣るこの老舗ホテルだが、このような素晴らしい人的サービスの対応を受けたら、「又泊まりたいと思う」のは私だけではないだろう。

かっこいい外資の高級ホテルで働くホテルマンと、施設の不利を人的サービスでカバーする老舗ホテルで働くホテルマンとでは10年後にどちらが立派なホテルマンになっているのだろうと考えてしまった。

 

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