ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」  

ホテルビジネスを考える 2005年〜

2005年08月1日更新 

ホテルのレストランを考える その8

ホテルではできるはずのないレストランをオープンした。赤字を目的にしたわけではないが当然赤字営業になる。

レストランを愛する人々が集い、自分達の理想のレストランを誰からも文句を言われずに創ったのである。20席で満席になる為にお客様へのサービスは行き届いた。

料理も運んでいて「よだれがでるほど美味しそう」と思ったほどレベルの高い料理が作られた。当然のように一流のお客様の来店で、日を追うごとに予約が取りにくくなった。

運転手つきの社用車でランチに来るマダムたち。お預かりするコートは超有名ブランドばかり。これまでのギャルソン生活で初めて見た完璧なテーブルマナーで食事する女子中学生。

宣伝活動もしない、サービス料も取らない、マーケットプライスを優先して売値は極力低めに設定、すべてが至れり尽くせりになるように限定の客席。

どう考えても繁盛しない理由はない。しかしこのレストランは毎日満席が続いても決して儲からない。

皆様方はどれほど赤字が出たかを知りたいだろう。おおむね1年間で2LDKの高級マンションの分譲価格分だと思っていただいて結構。

ホテルのレストランではこの赤字額は予算として認められない。売上が上がらなければ人件費を削られる。人が少なくなると美味しい料理も素晴らしいサービスも提供できなくなる。

そうするとこれまで布のテーブルクロスやナフキンを使えたのに、経費節減と言われ紙のクロスやナフキンを使うようになる。ビニールのクロスにする場合も多いだろう。レストランでは夢を見ることができなくなり、単なる高いだけのつまらない食堂になってしまう。

経費削減どころか売上も半減して赤字額はもっともっと増えていくだろう。ホテルのレストラン関係者なら私の言うことが間違いだとも言えないだろう。

さて、我々レストランを愛するチームの活躍にはおちがある。

このレストランチームがレストランウエディングを演出して結果を残したのだ。このチームはウエディングの素人である。

これまでのウエディングのプロができなかった、素晴らしい料理とNOと言わないサービスで新郎新婦の圧倒的な支持を勝ち取ったのだ。(施設のハードではなくサービスと言うソフトの勝利)

1軒屋のレストラン(ホテル風に言うと1バンケット)で年間200組以上の挙式と披露パーティを受注。平均出席人数は80名をこえ客単価も軽く5万円を超えていた。

1年間の総売上は10億円に少し足らないくらい売り、経常利益もレストランの赤字を吸収したどころか、2LDKのマンションが10部屋買える金額を計上したのである。

この業績をどこで知ったか不明だが、多くの同業者がこのレストランに訪れるようになり、次から次へと同じようなビジネスの施設が日本中にできるようになった。

これがブライダル関係者が言っている「ゲストハウスウエディング」なのだ。我々レストランチームが理想的なレストランを作ったことで、ホテルのブライダルへも多大なる影響を与えるようになったのは皮肉な話だろう。

ホテルの経営者の皆様方に申し上げます。

ホテルのレストランは毎日満席にすることが大切なことであり黒字を出すことではない。たとえ赤字が増えようが毎日満席営業を続けたならば「ホテルは必ず黒字営業が続く」

私は常に自分が経験した実績しか言わない。こうあるべきだ、あうだこうだといっている人に言いたい。

「だったらあなたがやってみればどうですか」と。

ホテルのブライダル革命につづく

 

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