ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第五部 福島ホテル&ゴルフリゾートビジネス 1997年〜1998年

2001/11/28  更新

コース管理業務の地獄

1997年12月、福島には冷たい雪が降っていた。突然の出向から何とか無事にシーズンを終えた。

営業売上8億円に対して経費12億円。3億円の赤字である。私が行った経費削減策も焼け石に水の状態。

私は1998年度は黒字を宣言していた。売上を上げる具体的な戦略と戦術の提示。そのために必要な人材確保と教育訓練計画の提示。

総支配人の私にすべてを任せてくれたら必ず結果がでるものと信じていた。

1998年の3月に向けて、開業までの詳細なスケジュールを組んだ。いよいよ来年に向けてスタートしようとした時、突然の社長からの指示が来た。

スキー場に行かせている社員を除く全社員(管理職のおじさん連中)でコース管理業務を実施する。当然、私も作業員リストに載っていた。

雪の降る寒いゴルフ場で、私に課せられた作業は松200本の植え替え。自慢じゃないがボールペンより重いものを持ったことがない。そんな私に松の植え替え作業などできるのか。

午前8時にコース管理棟に集合。社長の気合を入れる挨拶後に、グリーンキーパーから今日の具体的な作業指示が出る。

私は山の中にある3メートルくらいの松を掘り起こし、コース内の指定された場所に移す作業を指示された。

氷点下の山に登り、松の周り半径2メートルをひたすらに掘り起こす。道具はスコップだけ。なかなか掘れない。1本の松を倒すのに2時間もかかってしまった。

倒した松を軽トラックに積み、コース内の指定された場所に運ぶ。その場所でも埋める為の穴を掘らねばならない。穴に肥料を入れ、松を立て土で埋める。水を流し込み足で踏み固める。

1本の松で4時間もかかってしまった。これが200本なんて死んでしまう。作業終了は日が暮れる午後5時。体は完全に冷え切っている。

作業が終るとアパートに飛んで帰り風呂につかる。10分経っても温まらない。次の日は筋肉痛に悩まされる。

社長は「この作業を自前ですると何百万円も節約になる」と意気込んでいる。何かおかしくないか。

出向元のホテルにこの現状を報告してら何と言うだろうか。おそらく頑張ってくれしか言わないだろうな。(こんなこと報告できるか)

私は1週間の作業で68本の松の植え替えをした。人生で最も苦しい1週間であった。私は何か悪いことをしたのであろうか。

この突然の作業により私の黒字転換スケジュールは白紙に戻った。

 

この原稿は2001年作成

2006年再読

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