ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第五部 福島ホテル&ゴルフリゾートビジネス 1997年〜1998年

2001/11/1  更新

キャディ業務

お客様からお金をもらってキャディをしたことありますか?

リゾートホテルの総支配人として出向した私が、キャディ業務をさせられるなど夢にも思っていなかった。

本社から予約を断れるなと言われて、予約を取れるだけとったらキャディが足らない。大学のゴルフ部学生に頼んだり、過去のキャディに頼んだりキャディの手配に大忙し。

どうしてもキャディが足らない。仕方がないので社員でキャディができる人(そんなにいないが)をキャディにアサイン。当然私もそのメンバーに入る。

スタート前に、自分の担当するお客様のゴルフバックを探しカートに積む。スタートホールではメンバーを集めて朝のご挨拶。

「本日、キャディをさせていただきます」お客様は美しいキャディのイメージがあるのでこう言う。「キャディが足らんのか。・・・・」要するに不快感を表す。

スタートしたらOBが出る。一応ボールを捜しに山を駆け上がる。お客様が「もういいよ」というまで必死にボールを探す。「ハア、ハア」と早くも息があがる。

キャディカートから100メートル離れたところから、「キャディさん、5番持ってきて」と依頼される。5番アイアンを持って走る。「やっぱり6番がいい」と変更される。また走る。

1人でも下手な人がいるとペースが落ちて、後ろの組が迫ってくる。「早くやってくれ」と祈るが、空振りやOBやチョロやバンカーインなど次から次へと遅くなる。

何度ももたもたしていると、後ろの組が我慢できなくなり「若造、なにやってんだよ!早くいけよ!」と怒鳴る。「だって、こいつがへただから」とは言えない。

ハーフの9ホールが終るともうくたくたです。キャディラウンジに入れば、缶ジュースを3缶がぶ飲みする。弁当を食べる食欲もなし。「これは究極のサービス業だな」とため息。

それでも一生懸命尽くしていると、休憩小屋で「キャディへの感謝の品物」を買って頂ける。「キャディさんこれ」と言ってもらったときはやや嬉しい。

地獄のキャディ業務が終ると、通常業務が待っている。○○コンペの表彰式での挨拶がある。

「それでは本日の第一位○○さんへの商品は、当ゴルフコースの総支配人からの授与です」と言われて私が出て行く。

その中に、私がキャディをしたグループも入っている。当然、皆様は驚いた表情になるが、私はテレ笑いでごまかすしかないでしょう。

本当に疲れる総支配人の仕事。(泣きそう)

 

この原稿は2001年作成

2006年再読

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