ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」

第五部 福島ホテル&ゴルフリゾートビジネス 1997年〜1998年

2001/10/31  更新

本社からのFAX その反論

東京本社では、現地で一度も働いたことのない皆様方で週1回会議がある。オーナー社長と専務と部長さんたちで8名。(オーナーの指示を現地に伝えるだけの会議)

その日は現地で悪戦苦闘する私に、何度も会議室から指示の電話が入る。「風呂場のごみ箱は木のものでなく籠のものにしろ」「マネージャー会議の議事録は総支配人が書くのではなく、現地のマネージャーに書かせろ」などなど。

私は電話での指示では、正確なアクションを起こせないのでFAXでいただけるように依頼した。

次から次へと送られてくるFAXを、現地のマネージャーに回覧した。このような指示が本社から来ましたが各自の意見を自由に書いて戻してくださいと。

戻ってきた書類には、「冗談じゃない、これが現状だ」という意見が細か字で詳しく書いていた。

どう考えてもオーナー社長の指示は絶対である。この指示を現地のスタッフに徹底させようとすれば反発を食らう。

それでも強引に従わせようとすると、多くの退職者を生みオペレーションできなくなる。どうすればいいか全く分からなくなった。

本社からは予約を絶対断るなと言ってくる。ただ予約を取るのは誰でもできることだが、プレー時間が大幅に遅れる。コースから上がってくる時間は予定より1時間以上遅くなる。

帰りの新幹線の予約をしているお客様は、コンペパーティをキャンセルして苦情を言って帰っていく。この苦情が、本社に入り「現地はなにやっているのか」とFAXがくる。

「コース管理からヘルプをもらいOBが出そうなところに配置してボール探し等をさせてプレーを早めろ」と言ってくる。

この指示に対してコース管理責任者の答えは「応援するのはOKですが、管理作業の遅れは誰が応援してくれるのですか?1人1日10,000円以上の賃金をフォアキャディに使うのはもったいない」である。

このようなやり取りが1週間に30項目以上来る。総支配人の仕事は伝書鳩と同じだ。

総支配人は、風呂場のごみ箱のデザインを決める権限もない。会議の議事録を誰が書くのか決める権限もない。

 

この原稿は2001年作成

2006年再読

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