ホテルマンの駆込み寺「まんぷく寺」
第六部 関東ブライダルビジネス 1999年〜2002年
持込の罪と罰 ドレス 私がまだ人を疑うことを知らなかった頃、新婦から「ウエディングドレスは用意しています。持込にします」と言われた。 何の疑いも持たずに「いいですよ」と答えてしまった。これによりウエディングドレスの持込となった。 ドレスの持込とは、前日までに新婦が自分自身で持ってきてメイクルームに準備する。準備されたドレスを誰も触らないように鍵を掛け当日を迎える。 ところが前日に新婦宛の宅急便で荷物が届く。ブライダルゲリラ業者から送られてきたウエディングドレスである。
勿論、勝手に開くわけにはいかない。何か問題があった場合に責任の所在がはっきりしない。 結婚式当日、新婦の目の前でこの宅急便が開かれる。箱の中身を見て、自分の描いていたウエディングドレスや小物やベールなどがイメージ通りに入っている確立は極めて低い。 実際にあった事例は、ベールが回復不能なしわになっている。ドレスがほつれてボロボロ。小物が入っていない。左右の靴のサイズが違っている等。 何とかしてあげたいとの気持ちから、お二人の担当者が必死で走り回ることになる。その姿を見た新婦は、初めてドレスをゲリラ業者から持ち込んだ事を後悔する。 ウェディングドレスの最新情報や流行などは、結婚情報誌などがゲリラ業者からの広告を取る為に発信している。 それを信じた新婦は、広告を見てドレスショップを回り強引なセールスにあって決めてしまう。 提携店でもないドレスショップが、堂々と持込料がかからない提携店と嘘をつく。持込料相当分を当然のように値引きする。 大量に受注したドレスショップは、箱に詰めて送るだけ。当日、間違いがあっても開店前で電話も通じない。 提携店や直営のドレスショップでは、もし間違いがあっても24時間対応できるような体制を作っている。もし間違いがあってもスタッフ全員が責任をもって対応する。 こだわりがあって決めた「私の夢のウエディングドレス」を箱に詰めて送るだけの業者に新婦の気持ちなど分かるはずがない。 新婦の気持ちが少しでも分かるなら、自分たちで会場に届けるはずである。会場の人たちに嫌な顔をされるのが分かっているから箱詰め宅急便。 ホテルマンの皆様、ホテルに入っている衣装屋には新婦が「素敵!」と言われるドレスを置いているかをチェックされたし。 私が見る限りほとんどの衣装屋は5年前のドレスを堂々と置いてある。どういったドレスが着たいのかを聞いてそのドレスを揃え続けなければ持込は増える一方だ。
この箱の中身は愛ではなく無責任な利益 |
この原稿は2002年作成 2006年再読